2005年07月22日

師走(6)

 智巳は全身にできた打ち身傷を制服の下に隠して、樹海を出る。歩くたびに全身が悲鳴を上げる。吹雪は器用にも顔面以外を打ち据えてくれた。そのお陰で見た目は負傷しているように見えないのは、彼に感謝するべきか、どうか。
 智巳は人目を忍んで、保健室に向かう。ただ、表から出入りすると、どうしても他の生徒や教師の目についてしまうので、裏側の窓からこっそり中に入れてもらうことにする。現在の保健室は、みなと そらが取り仕切っている。剣術研究会顧問、ネイ・リファールに「使われてあげてる」と吹聴するその人兎は、現在智巳たちが置かれている状況について理解がある、数少ない学校関係者の一人である。
 校舎の間にできた路地を通り、裏手に出る。先客が二人。両方とも、見覚えのある顔だった。幸か、不幸か。
「よう、坊ちゃん」
 龍波輝充郎は、血のついたタオルを頭に被ったまま、自由な左腕をゆるゆると上げる。では右腕はというと、それは柚木塔子の小柄な体によって辛うじて支えられている。
 智巳はその二人を無表情で眺めながら、手を上げる。
「どうも。すごい怪我ですが、何かあったんですか」
「んん? ああ、大したこっちゃねえ。ただの、特訓だ」
 塔子が呆れたように口を開く。
「ただの、ねえ。音無山防空壕を半壊させるような特訓を、『ただの特訓』とは言わないだろう。一つ間違えれば、私も君も生き埋めだったんだぞ」
「そう言うな。無事だったんだから良かったじゃねぇか」
 保健室の窓から、みなと そら が顔を出す。
「何をごちゃごちゃと外で話してるの。さっさと入りなさい」
 塔子と智巳は、手分けして輝充郎を保健室の中に運び込む。そら はその光景をしばし眺める。
「それじゃ、服を脱いで。でかい方、じゃなくて、男二人か」
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