2005年07月22日

師走(12)

 職員室。智巳は絶望的な面持ちでその天井を見上げていた。彼の前にあるデスクには、製図ケースと、その中から取り出された木刀が置かれている。
 生活指導担当の教師が、智巳に尋ねる。
「お前、この木刀で何するつもりだったんだ?」
 智巳は困り果てた、というよりはむしろ、疲れ果てた、という面持ちで机向こうに視線を延ばす。その先では、ウォレスがこちらの方を見て、アタシゃ聞いてマセン、と言いたげに肩をすくめて首を振っている。
「おい、鷲塚!」
 智巳は居直って、教師に向き直る。
「トレーニングの為に持って来ていました」
「お前な、つくならもう少しましな嘘をつけ。体育系の部活動やっとらんお前がなんでトレーニングで、しかも木刀なんぞ使うんだよ」
「居合抜刀道は精神修養にいいと聞いたものですから」
 教師は額に皺を寄せて、椅子に座って智巳をねめ付ける。
「大体な。百歩譲ってそれを信じてやるとして、学校にまでわざわざ持って来る必要はないだろうが。しかもこんな物の中に隠して、後ろめたい物があったんじゃないのか、あ?」
「それは、当然ですよね」
 智巳が憮然とした表情を作る。
「何でもかんでも妖怪バスターの活動ととられちゃ、こっちはたまりませんし」
「あのな、何にもするなって言ってる訳じゃないんだ。学生なら学生らしく、慎ましい生活をしてりゃそれで済む話だろうが」
「僕は慎ましいつもりですよ」
 教師は智巳の体を軽く拳骨で小突いた。服の下の痣にさわって、智巳が思わず小さなうめき声を上げる。
「これが慎ましい生活やってる体だってのかよ。とにかく、木刀は没収する。精神修養がしたいってんなら別のことをやるんだな」
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