2005年07月22日

師走(13)

 ウォレスは遠巻きにそれを横目で見ながら、向かいに座ったマリアに声をかける。
「と、まぁ、ああ言う風に教員生徒の目も厳しい折デスからね。進路については表向きだけでもまともに考えるべきデス」
「あんた、それで本当にいいのかよ?」
 ウォレスは答えない。
「大体、こんな時期になんだって抜き打ちで、持ち物検査なんかやる必要あるんだっての。オイラたち潰すためとしか思えねぇじゃん」
「アタシは本当に何にも聞かされてないんデスよ。一部の先生たちで突発的に決めたことらしいデス。それはさておきマリアさン、別に今日はアナタの愚痴聞くために、ここに呼んだわけじゃないデスよ?」
 マリアがむくれっ面を作る。
「オイラの進路相談なら、してもらうまでも無いよ」
「そういう訳にもいかんデショウが。リファールセンセはそーゆーのズボラそうデスしね。取り敢えず体育大の推薦枠ならどうにか滑り込ませることもできマスよ」
「やだよ、そんなの。スポーツなんてつまんねーから続かないし」
 ウォレスは万年筆の底で自分の頭をかりかりと掻いた。
「あのデスね、マリアさン。この世知辛い世の中で妖怪バスターの専業なんてな、やってけないんデスってば。今の汝鳥はこの有り様デスし」
「いいよ、別ん所でバスターやるから」
「何より、現実的じゃありマセン」
 マリアはウォレスをしげしげと眺める。
「なぁ、ゲー先生。やっぱあんたおかしくね?」
「アタシゃ十分に健康体デスとも」
「そういう問題じゃなくて! 現実的じゃないのどうのと、あんたがほざくのがらしくねぇって言ってんだよ。何があった? まさか、あんたん所にも来たんじゃないだろうな? あのナス女が」
 ウォレスが一瞬、眉を動かした。マリアはそれを見逃さなかった。
「来たのか? まさか、奴の言うこと真に受けてんじゃ」
「やかましいデスよッ!」
 机を叩く音が職員室中に響き渡った。教師たちの視線が一斉にウォレスに向けられる。
 静まり返った職員室で、マリアがぽつりと意見を述べる。
「あんたが一番、やかましい」
 ウォレスは大きく息を吐くと、手にしたファイルを閉じる。
「どうやら、互いに少し冷静になる必要がありマスね。進路指導の話は、また今度にしマショウ」
「オイラは十分冷静だよ?」
「それから」
 ウォレスが再び、マリアを見る。
「リファール先生からはまだ何も聞かされてないと思いマスんで、いっときマスが。剣研とオカミスに合宿禁止命令出マシタ。必要ないだろってことでね。マリアさンも承知しておいてくだサイ」
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