2005年07月22日

師走(16)

 ウォレスがその場に現れた時には、剣術研究会部室の周囲には二重三重の人垣ができていた。
「あちゃー、もう小娘は騒ぎ起こした後デシたか。しかし、これは」
 人だかりの合間から惨状を垣間見る。
「怪獣でも通りマシたか?」
 人波の中心では、机だったものの残骸があちらこちらに散らばり、そら が怪我をした生徒教師に、ややおざなりな治療を施している。またそのすぐ近くでは、春菜が数人の教師たちを相手に弁明を行っている。
「リファール先生の言う通り、最初に手を出そうとしたのは風紀委員会の人たちです。私たちが止めようとしたのを無理やり突破しようとしました」
「それは本当なのか? 別にリファール先生を庇い立てしなくてもいいんだぞ」
「こんなことで嘘を言って何になるというんですか?」
 教師たちは顔を見合わせる。
「まあ、今回は風紀にも行き過ぎた面があったとしてもですな」
「ここまではいくら何でもリファール先生もやり過ぎですよ」
 人垣を割ってウォレスが中に入って来る。
「ちょっと待った。これ全部、リファールせんせがやったってんデスか?」
 春菜も真琴も無言で首肯する。
「うそーん。あの小娘がいくらなんでもここまでやれマスかぁ? うちの愚妹とかならともかくー」
「愚妹だなんて、失礼ですわねぇ」
 トウカが咲哉を伴って、現れる。
「お、話をしてみれば。さあさあ、おとなしく観念してきちんと謝んなサイ。この前人のティーセット、粉末になるまで粉砕しておいてまだ懲りてマセんかねこの子は」
「それはポルターガイストの仕業ですわ。さておき、謝るも何も、ワタシたち今来たばかりで何が起こったかもよく知りませんわよ」
 その隣で咲哉が、保証しますとばかりに首を縦に振っている。
「ちょっと、マジで? 本当に小娘が? 全部?」
 ウォレスが信じられぬとばかりに部室の中を見る。
 部室ではそのネイ本人が、漫画本を目隠しにしてふて寝していた。
この記事へのコメント
コメントを書く
コチラをクリックしてください

この記事へのトラックバック